コーチングとOJTとの違い

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

 暑さも一服、雨が続くお盆休みとなっていますがいかがお過ごしでしょうか。

 さて、前回は、現場とともに悩み、ともに寄り添いながら答えを引き出していく質問型のコミュニケーションであるコーチングについて、その背景を述べました。
 今回は、コーチングとは何なのか、その概念について理解しやすくするため、私たちの会社でも、そして多くの企業においても実施されているOJT(On the Job Training)との違いを見てみたいと思います。

 OJTとは、職場の上司や先輩が、部下や後輩に対して実際の仕事を通じて指導し、知識、技術などを身に付けさせる教育方法です。教える側である上司や先輩が「答え」を持っており、それを伝えていくという指導方法です。「上から下に行われる」というイメージになります。

 一方で、コーチングは答えを相手に教えることがありません。「その人が必要とする答えは、全てその人の中にある」という考え方がベースにあります。あえて、言葉でコーチングを定義するならば、「相手が本来持っている可能性や能力を最大限に発揮させること」といえます。OJTとの大きな違いは、相手に教えたり、指示を出したりすることではなく、質問を投げかけることで相手の答えを引き出す「質問型のコミュニケーション」であることです。

 コーチングに関連する技術は非常に多く、関連する情報も世の中にあふれています。そのため、技術さえ身に付ければ上手くいくと思われがちです。しかし、コーチングを行うには、前提となる二つの考え方を提供側がしっかりと理解していなければ、いくら技術について学んでも効果が得られないと考えています。

 そしてその二つの考え方とは、「人は皆、無限の可能性を持っているということ」「その人が必要とする答えは、いつもその人の何にあるということ」です。これらは、性善説的な人間観であるともいえます。

 一方で、指示・命令型のコミュニケーションは、「相手を上手く管理する」という会社や上司のご都合主義的な考え方が根底にあり、「人間は基本的に怠ける存在だから管理する必要がある」という性悪説的な人間観ともいえます。

 人間には無限の可能性があり、「答えはその相手の中に必ず存在している」という考え方が前提にあるからこそ、質問型のコミュニケーションが求められているともいえます。

 次回は、コーチングの基本的技術について紹介をしていきます。

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