「思考する時間」を意識的に確保する

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

仕事の種類。このことばを聞いてどのようなことを思い浮かべるでしょうか。

 今回お伝えしたい仕事の種類とは、業種や業界、社長や部長などの役職などのことではありません。業界や会社の規模に関わらず、役職に関わらず、誰もが行っている仕事には二つの種類があります。それは、「思考」と「作業」です。
 思考する仕事と作業する仕事。もちろんどちらも重要なのですが、思考する仕事を後回しにしてしまう方も多いのではないでしょうか。この原稿を例にあげると、パソコンに向かって原稿をタイピングする作業の時間は15分程度なのですが、お伝えしたい内容を考えたり、構成を組み立てたりする思考の時間は、10分で終わる場合もあれば、数時間かかる場合もあります。

 私たちは、得てして作業する仕事を先に取り組んでしまいがちです。作業に分類される仕事は、当然、取り掛かれば消化が進むので進捗がその場で把握できます。つまり、達成感や安心感を味わうまでの過程や時間数を予測することができます。また、当然ですがお客様からの問い合わせやクレーム対応といった外部要因により、すぐに取り掛かるべき緊急性の高い作業が該当することもあります。

 一方で、思考に関する仕事というものは、相当な発想力のある天才でない限り、その場その場で完結することはできません。取り掛かったとしても、完全に消化することはできず、達成感を味わうまでの時間的見通しも立たず、作業仕事に比べると緊急性も少ないと言う場合が多くあります。

 もちろん、私たちに与えられた時間は限られているので、優先順位をつけなくてはいけません。作業する仕事のみで一日を終えてしまうこともあります。作業する仕事であっても、簡単な場合は少なく、それなりに身体的体力も知的体力も消耗します。したがって、作業する仕事を終えたあとで思考する仕事をしようと思っていても、深まらない可能性が高くなります。
 しかしながら、思考する仕事にしっかりと時間を割り当てるようにしないと、「気づいたら未来がなくなっている」なんてことになりかねません。

 「その本乱れて末治まる者はあらず。」
 儒教の経典である『大学』にはこのような一節があります。ここでいう本とは本質を探求する思考の仕事、末とはその時々に応じた務めである作業の仕事にあたります。思考する仕事は先行投資ともいえます。本と末、すなわち思考と作業の順序を大切に意識していきたいものです。

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