思考を深めるには、ホワイトボードを用いて見える化する

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

前回は、思考の仕事と作業の仕事。前回はこの違いを取り上げつつ、二宮金次郎が薪を背負いながら読んでいることで有名な『大学』という書物より 「その本乱れて末治まる者はあらず」という一節を取り上げました。

 ここでいう本とは物事の本質を探求する思考の仕事、末とはその時々に応じた作業の仕事にあたります。この本質となる仕事については、なかなか難しく、すぐにアイディアが降りてくる場合もあれば、何日もかかる場合もあります。

 そこで、私が奥底に眠っている思考を半ば強制的に見える化し整理していくために、使っているのがホワイトボードです。この原稿もホワイトボードにアイディアを書いてから、書き始めました。ホワイトボードの何がよいのかというと、立つことで集中して考えることができることです。また、自然と文字が大きくなることで、余分な文章を書かなくなるので、本質に辿りつきやすくなります。ホワイトボードマーカーを用いると丁寧な文字にはならないのですが、滑りがよいので、かなり早く書くことができます。もちろん瞬時に消すこともできます。だからこそ、思考の回転もスピードアップします。一気にホワイトボードを書いたら、そのあと全体を見渡します。すると思考だけしか働かなくなりますので、自由な発想が生まれてきます。

 これは、コピー用紙でも代用することは可能なのですが、何も使わずに脳内のみで完結させようとすることは無理があります。多くの脳科学の書籍でも書かれているように、思いついたアイディアの記憶を保ち続けながら新たなアイディアを発想し続けることができるほど、脳のメモリは大きくはありません。したがって最低限の言葉は書いておき、それを後から俯瞰することで、思い出すことではなく、思考することに脳の能力を集中することができます。

 「その本乱れて末治まる者はあらず」にもあるように、思考と作業を分け、思考を優先していくという感覚は私たちにとって重要です。加えて、それを噛み砕いて表現すると、気になることを書き出すということとなります。すると、思い出す必要がなくなり、思考に脳の能力を使い切ることができます。

 まずは「今取り組んでいる仕事は思考なのか作業なのか」を振り返ってみる習慣づけを行い、もし思考の仕事をすべき段階で作業に陥っていたり、アイディアが出なかったりしたときはホワイトボードやコピー用紙に頼ってみてはいかがでしょうか。

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