手持ちのものを最善に生かすことが、人間的叡智の出発

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

同類親和ということばをご存知でしょうか。

 先般、私たちに対してあるご依頼をいただきました経営者様(仮に「A社長」といたします)と個別に打ち合わせをする機会をいただきました。その際に、A社長から「同類親和」ということばを教えていただきました。同類親和とは「類は類を以て集まる」や「類は友をよぶ」という格言と同じ意味であると思います。

 A社長の会社は先代であるお父様の時代、バブル時代の過渡期ということもあり身の丈に合わない株式投資関係で大きな負債を抱えてしまわれ、社内の雰囲気も荒廃していたそうです。その後、次男でありながらも縁あって会社を承継され実務としては苦労を重ねてこられました。しかしながら、逆境にめげず20年近くのあいだ「こういう方向でいこう」と会社経営の理念や想いを顕(ルビ「あらわ」)にされつづけた結果、次第にA社長のフィロソフィーに合わない方が辞めていかれ、お取引先も無理な拡大することなく素晴らしい考え方の会社のみと末長く大切にお付き合いをする体制をつくることができているということでした。

 数年前に亡くなられた先代様に対して、A社長は「困難を与えてもらい、それが、私に闘志を植えつけてくれた。常に誰からも学び、常に進歩し、傲慢にならないという謙虚さを与えてくれた」と目を潤ませながらお話をしておられる姿勢に感動しました。

 私の拙い経験を振り返ってみても、時流のタイミングが合わなかったり、​​悪い人にめぐりあったり、フィロソフィーの合わない人がいたりしたからこそ、「これからどうすべきか」を考えるような機会をいただいたことがありました。もちろん聖人ではないので、その瞬間刹那には残念ながら腹が立ってしまうこともあるのですが、ある程度期間が経ってみると「大切なことを教えてくれた。気づかせてくれた」と有り難く振り返ることが多々あります。

 尊敬する森信三先生のお言葉に「自分はつねに迷い通しの身と知るとき、そのまま悟りに与(ルビ「あず」)かるなり」「すべて手持ちのものを最善に生かすことが、人間的叡智の出発といえる」というものがあります。もちろん、すべてのご縁が前向きで、すべての社業が順風満帆で、業績も右肩上がりが続くことが望ましいわけなのですが、そうではないときこそ「私たちの在り方が問われている」ということを肝に銘じる機会をいただきました。

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