量質転化「資源を最大限に活用」

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

前回の拙稿では、量か質かという話について書きました。結論としては、誰もが最初から質を兼ね備えているわけではないということから、「質に変容していくまで量に向き合うことから逃げないことが大切」ということを述べました。

 このことに関係して、本日は量質転化という話をしたいと思います。量質転化とは、量を積み重ねていくと、ある閾値において質的な変化が生じるというものです。多くの事象に共通していえることで、「質が変化するまで量をこなす」ことが肝心で、閾値より手前、すなわち変化する前の段階で量をこなすことをやめてしまうと、質を良くするための鍵が何か分からないまま終わってしまうケースに陥ります。

 ここから何が伝えたいのかといいますと、ただただ単純に、「私たちはどれだけ仕事をしているのか」ということです。最近、タイムパーフォーマンスを略したタイパという言葉を良く聞きます。その他にも、コスパ、効率化、仕組み化といった時間あたりの労働生産性向上に関する言葉もあふれています。しかし、ここで勘違いしてはいけないのは、これは組織全体のマネジメントにおける注目点であり、組織内で生産性向上を求めることは大切であったとしても、私たち経営者は結局のところどれだけハードワークができるかが鍵ということです。

 シンプルにいえば、成長を続ける経営者は常に仕事をしていますし、たとえ休んでいるときがあるようにみえても、頭の中では仕事のことを考え続けています。

 ハードワークと量質転化について考えてみると、ハードワークな人は、時間に代表される所与の資源を最大限に活用し、量を追求することにより結果的に質に転化を図っていく能力を持っています。仕事やプロジェクトに対して大量の時間を投入して真剣に取り組み、結果として効率的な業務のあり方を見出していきます。つまり、ハードワーキングな人は、与えられたリソースや時間を効率的に活用し、量質転化を最大限に実現することで、成果を生み出す能力を持っています。この能力があるリーダーのもとには、結果として効率的な手法や知見が集まっているということで、優秀なメンバーが集まります。

 ところで、この量質転化という言葉、発端は弁証法で有名なヘーゲルが由来となっています。正確にいいますと、弁証法の三原則の中の一つがこの量質転化というものです。次回は、この量質転化の原典について、考えてみたいと思います。

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