本末の本を考える「何のためにやるのか」

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

前回に続き、本末について考えていきます。

 仕事をしていると、大きく二通りの思考があるように感じます。
それは、「何をするのか」を考える思考と、「何のためにやるのか」を考える思考です。前者は、やることが目的であり、結果を出すことが大事です。後者は、なぜやるのかが目的であり、なんのためにやっているのかという過程を大切にします。もちろん、結果的には両方が重要となるのですが、ポイントはこの順番がどうなっているかということです。

 本日(6月7日)、ある企業の経営者に対して、6月下旬に控えた海外人材の入国前ガイダンスを行っていました。ミーティングがはじまったばかりの段階では、「どんな仕事をさせるのか」や「どんな準備をするのか」ということが経営者からのご興味の中心になりがちでした。そこで、私よりマインドマップを用いつつ、海外人材の入職を契機として再度「会社として何を大切にしていくのか」といった企業理念や、仕事・社員との関係構築・教育体制の体系化について、意見交換と整理を行いました。

 この例でいいますと、「どんな仕事をさせるのか」「どんな準備をするのか」という部分は、冒頭の「何をするのか」に該当し、本末の「末」にあたります。一方で、海外人材の入職を通じて企業理念や仕事・社員との関係構築・教育体制などの体系化については、「何のためにやるのか」という「本」となります。
 この「何のために」ということは、リーダー自身の初心を確認するものでもあります。このことは、働くことへの原点であり、その気持ちがあれば、ちょっとやそっとのことでは物事に動じない軸を持つことができ、それを伝えることができます。しかし、自分が本質と向き合っていなければ、「何をするか」が重要となってしまい、業務や職種、日々の環境に依存してしまうことになります。

 「何のためにするのか」を考えることは、本質的であり続けようとする確認でもあります。また、「何のためにするのか」を伝え続ける、ともに考え続けるということは、お互いにそれぞれが、本質を考え続けて助け合っていこうという相互理解の仕組みにもつながります。

 今回も「物に本末あり、事に終始あり。先後する所を知ればすなわち道に近し」ということばに帰結するわけなのですが、まずは本末の「本」、すなわち「何のためにやるのか」を探求し、その後に「何をするのか」という末を考えていくという順序が大切といえます。

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