人生の公式「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

さて、前回のコラムでは昨今の経済的風潮である「今だけ、金だけ、自分だけ」の反対である「長期、本当の豊かさ、全体のため」という、私たちが昔から大切にしてきた日本的な価値観について書きました。ここで思い出されるのは、「道に志し、徳に拠り、仁に依り、藝に遊ぶ」という論語の一節です。意味としては、「立派な人物というものは、まず人の道を志していなければならない。次に徳が優れ、仁があり、そして、六藝に通じてゆとりのある人物が理想である」ということになりますが、もう少し私なりに解釈すると、「まずは正しい人の道というものを体得し、その上で人格を磨き、他人に対する思いやりを持つことが大切であるが、それだけでは人間不完全。教養や趣味をしっかりと身につける事が人間の幅を出すことになる」ともいえます。

 昨夏に逝去された稲盛和夫氏は、と言っています。ここで一番大切なのは、考え方です。熱意や能力は0点から100点まであるのに対して、考え方はマイナス100点からプラス100点まであることが理由です。間違った考え方は熱意や能力が高いほどにマイナスに作用します。論語も稲盛氏の一節も、「まずは人の道が大切」ということであり、「人の道」とは稲盛氏の言う考え方に当たる部分にあたります。

 次に、取り上げたいのは「藝に遊ぶ」です。人間としての幅を出すには、趣味を持ち、教養があることが大切だと言っています。ここでいう藝とは六藝であり、礼・楽・射・御・書・数、すなわち、礼儀、音楽、弓術、馬車を操る術、書道、算術を指しています。やがて日本独特の諸文芸や和歌がこれらと並ぶことにはなるのですが、総じていいますと、教養とはさまざまな分野にわたる知識や常識、古典文学や芸術など質の高い文化に対する広い造詣、そして品位や人格が物事に対する理解力や創造力に結びついている状態を指します。教養を備えた人が相応の敬意を得るのは、単に知識が豊富であるということではなく、人間性という実をともなっているからです。

 孔子が説いているのは、リーダーシップ論であるともいえます。君子、すなわち立派な人が人の上に立つべきであるというシンプルな原理です。私たちも「道に志し、徳に拠り、仁に依り、藝に遊ぶ」ことを実践していく必要があるといえます。

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