「今だけ、金だけ、自分だけ」

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

「今だけ、金だけ、自分だけ」
 この言葉にドキッとした方は多いのではないでしょうか。私もその一人です。
 先般、ある会の新年例会において、国際金融経済学者の真田幸光氏の講演を聴く機会がありました。その際、国際金融の悪しき常識として、この「今だけ、金だけ、自分だけ」という言葉の紹介がありました。まさに、今の社会的風潮を評した言葉であるように感じられます。

 一つ目の「今だけ」という心のあり方が決定的に見落としているのは、歴史的な視野です。過去の歴史から学ばず、将来を考えず、今この時を安穏とやり過ごすことのみが優先されていては、人としての生き方に基づいた積み重ねができません。

 二つ目の「金だけ」は、文字通り経済的な損得勘定のみが価値基準になっていることです。グローバル化という言葉を用いる私たちには、残念ながら文化や伝統を軽視する考え方が見え隠れすることもあります。

 三つ目の「自分だけ」は、欲望を数限りなく肯定していくことによる消費文明を推奨してきた社会のあり方そのものが問われている課題です。世代間の断絶や経済格差は拡大してきています。日本人の美徳として、震災や災害などの局所的な出来事については、幸いなことに大きな援助や支援の手が差し伸べられる社会になりました。一方で、全体的、すなわち全員が主体者となりつつある出来事の中では、自らの自己変容を伴うような行動ができない、そんな社会の本質課題が問われています。

 それでは、新しい時代はどうすべきなのでしょうか。「今だけ、金だけ、自分だけ」の反対ならば、「長期、本当の豊かさ、全体のため」といったところでしょうか。
 これは振り返ってみると、私たちが昔から大切にしてきた日本的な価値観です。もちろん、企業経営の目的は永続にあります。永続のために経済的利得を優先することは大切ですし、私たちの会社においても経済的数値の管理をしています。しかし、例えば投資の世界で「長期」といえば3年から5年を考えるものの経営者にとっての長期イメージは30年であるように、大切にしているのは自分たちの世代が次代に何をどう渡すのかということです。

 今こそ、日本の古きを訪ねたり、歴史を振り返ることが必要です。グローバリゼーションの転換期を迎えた今こそ、「長期、本当の豊かさ、全体のため」を考えていく。そんな一年が求められているのではないでしょうか。

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