感情のおもむくままにことばを発してしまい、相手の気持ちを害してしまった。
このような経験はないでしょうか。

自分から一歩離れて冷静にことばを発してみると、同じ内容でも印象は良くなります。相手への伝わり方は、相手目線なのか自分目線なのかで大きく異なります。これをコーチングの分野では、「YOU(ユー)メッセージ」と「I(アイ)メッセージ」といいます。今回は、YOUメッセージとIメッセージについて少し書いていきたいと思います。

YOUメッセージとは、その名のとおり、「あなた」が主語になって発せられるメッセージのことです。相手を主語にして、観察したことや感じたことを伝える手法です。たとえば、「あなたはパソコンが得意だね」という言い方です。YOUメッセージは発信する側の主観で言っているので、もし、相手が「自分はパソコンがあまり得意ではない」と思っていた場合、こう言われても本人は何となく受け入れづらいときがあるものです。

これに対して、Iメッセージとは、自身、つまり「わたし(I)」が主語になって発せられるメッセージを意味しています。たとえば、「君のパソコン技術のおかげで、僕は助かったよ」というような言い方です。Iメッセージは素直な気持ちを伝える言い方です。相手を評価するニュアンスが含まれていないことが特徴であり、相手にとっても受け入れやすいものです。

では、次の言い方をYOUメッセージとIメッセージで比較してみましょう。

「あなたがこんな間違いをするなんて、一体何をしているんだ」

この表現からは「お前が悪い」という非難の意図が伝わってきます。このように言われれば、相手は二度とあなたに対して本音を話さなくなくなるでしょう。売りことばに買いことばで「うるさい」と返ってくるかもしれません。

同じ事例でもIメッセージの観点では、
「私は、あなたが何故間違ったのか原因を考えていたんだ」
となります。
このことばには非難が含まれておらず、相手は「次からは気をつけよう」と思うでしょう。

人間らしい生き方を考えたアドラー心理学では、「縦の関係は精神の健康を損ない、横の人間は相手を勇気づける」といっています。縦の関係とは、前述の非難のような上意下達の言い方であるYOUメッセージであり、横の関係とは、相手と同等な視点であるIメッセージです。つまり、感情のおもむくままに話をするとYOUメッセージになり、相手の立場を考えればIメッセージになります。私たちは、つねにIメッセージの視点で相手に寄り添った気持ちを伝えていきたいものです。

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