「進むべき道にある信号が、すべて青信号になる」ということはない

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

「天のまさに大任をこの人に降(くだ)さんとするや、必ずまずその心志(しんし)を苦しめ、その筋骨を労し、その体膚を餓えしめ、その身を空乏にし、行いにはその為すところを仏乱(ふつらん)す」(孟子)

 実は、先週につづきロジカルシンキングの話題を書こうと思っていたのですが、週末にかけて考えさせられる相談がありましたので、そのエピソードをお伝えします(この話題の流れもロジカルシンキングともいえます)。
 ある製造業の後継者が数年がかりで新規事業に挑戦しています。無事に、製品化の目処がたち、お引き合いをいただけそうな優良企業も見つかり、現在、諸条件のすり合わせを懸命に行っています。その際、少し前にお客様の会社から「公的機関でJIS規格にもとづく製品試験を受けてほしい」という依頼を受けることとなりました。はじめての製品納入となりますので、至極真っ当なご要望です。

 さっそく、地元の機関に連絡をしたのですが、残念ながら設備が長年故障しており、試験需要も見込めないため今後も修繕の見込みは低いとのことでした。機転を効かせた熱心な職員さんが全国の機関に問い合わせをしてくださったようですが、どこも「需要がかなり少ない試験」ということで、日本全国どこにも検査環境を見つけることができませんでした。
 さて、この時に皆さまでしたらどういう行動を取るでしょうか。すぐに、この事業を諦めてしまうのでしょうか。
 私は、この嘆きをお伺いしたときに、すぐにピンときたことがあります。それは、新しいことをしようと思うと「確実に何か問題が起きる」ということです。

 「進むべき道にある信号が、すべて青信号になる」ということはありません。もし簡単に青信号になるような道でしたら、過去に誰かがやっていたわけであり、わざわざ苦労して新規事業を立ち上げる必要性もありません。
 そこで思い出したのが、冒頭にご案内した孟子の格言です。私なりに意訳をすると「天が人に大きな仕事を任せる場合には、必ず厳しい試練を与える。その理由は、大きな仕事を成し遂げるに値する立派な人物に育てようとしているからだ」となります。

 実務としては、この壊れていた検査機の修繕を依頼するものの、民間取引としては待ってはいられない状況ですので、次善の策を考え、決断し、実行していく必要があります。
 この後継の方には、是非とも試練を乗り越え、新たな自分だけの道を歩んで欲しいと願っています。

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