コーチングと承認の技術

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

木々の葉の散り始めが見受けられるようになりました。着実に秋の足音が近づいてきています。

さて、人づくりとマーケティングの視点からのコーチングとして、前回までは聴き手側である私たちの大切な三つの心構え、「耳・目・心で聴く」「相手の話を遮らない」「相手の話を否定しない」を紹介してきました。

それでは、心構えをマスターしたとしたら、すぐに相手から能動的な意識を引き出すことができるでしょうか。それは否です。前提としては、相手との信頼関係が必要となります。そしてその信頼関係を築いていくための技術が、今回から考えていく「承認の技術」ということになります。

承認とは、「相手の存在を認める」ということ。過去の本稿でも取り上げたことがある、有名な「マズローの欲求五段階説」では、自己実現欲求の下に尊厳欲求があります。尊厳欲求とは、「他者から認められたい」「尊敬されたい」という欲求です。つまり、自分の能力を最大限に発揮していきたいという自己実現欲求の段階に到達していくためには、その下層にある「他者に認められたい」という欲求が満たされている必要があります。

話をコーチングに戻しますと、コーチングとは「相手が本来持っている能力や可能性を最大限に発揮してもらうこと」であり、これは自己実現欲求につながる技術といえます。つまり、承認の技術というのは、コーチングの土台を構成する技術であることが分かります。

承認の技術というものを簡潔に表現すると、「あなたのことを、しっかりと認めていますよ」ということを言葉として相手に伝えることです。言うは易し、行うは難し。言葉で表現することは簡単ですが、実際にそれを行うことは本当に難しいものです。例えば、職場の同僚が昨日はどんな仕事ぶりであったかを思い出してみてください。恐らく思い出せない人が殆どでしょう。

やはり、私たち人間は「自分が見たいものしか認識していない」存在であり、承認の技術を発揮するためには、私たちに視野の拡大が求められるといくことになります。

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