ファシリテーションと場づくり
季節は確実に春が近づいていきていることを感じています。
さて、前回は会議や対話のファシリテーションとして、効率的にプロセスを管理する必要があり、その段階について「場づくり」「拡散」「意味付け」「意思決定」「まとめ」という5つのステップがあることをご案内いたしました。今回からはその各段階について、私たちの事例を盛り込みつつ、考えていきます。
はじめに「場づくり」からです。場づくりのポイントは、いきなり本題に入ってはいけないということです。「気合いを入れてミーティングをはじめるぞ」とモチベーションを高めることは確かに大切ですが、すぐに中身に入ってはいけません。まずやるべきことは、場の雰囲気を整えることです。ファシリテーターの気持ちは会議に向かっているかも知れませんが、参加者の心理はそうとも限りません。ギリギリで参加した人や、忙しくて他のことばかり考えている人、ひょっとしたら直前に顧客からクレームを受けて落ち込んでいる人がいるかも知れません。想定する議題にもよりますが、悲しいかな今の日本社会において「会議に前のめりになって参加したい」と熱心に考える人のほうが少数ではないでしょうか。
そのままスタートしてしまっても、上手くいくはずがありません。参加意識を高めて参加者を巻き込んでいくことが必要なのです。
場の雰囲気を整える技術の総称を「アイスブレイク」といいます。この語源は、参加者の不安や緊張を氷にたとえ、その「硬い氷をこわす、溶かす」という意味です。手法としてはいろいろあるのですが、私たちの会社では「GOOD & NEW」をもっぱら活用しています。GOOD & NEWとは、24時間以内にあった良かったことや新しい発見を1分程度で各自が発表して、全員が共感した上で拍手を行うというゲームです。「朝、健康づくりのためにウォーキングをして気持ちがよかった」「電車で座ることができた」など、難しいことを発表する必要はありません。私が考える効用は、相互理解、ポジティブな雰囲気、そして普段から良いことを考える習慣づくりです。参加者の前向きな本音が垣間見えるだけで、張り詰めていた雰囲気が一変し、笑顔で会議にのぞむことができるようになります。
このように、いきなり本題に入るのではなく、是非、場を整えることから意識してみてはいかがでしょうか。次回は「拡散」の段階以降について解説して参ります。
※注
「アイスブレイク」は和製英語。正しい英語では”break the ice”といいます。