存在の承認
「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉があるように、秋分の日を過ぎ、暑さも徐々に和らいできました。また、私がいつも通る河川敷にも美しく彼岸花が咲いており、季節の移り変わりを感じています。
さて、人づくりとマーケティングの視点からのコーチングとして、前回はマズローの欲求五段階説を取り上げました。相手の尊厳欲求を満たさなければ最上位である自己実現欲求の階層に移行でず、尊厳欲求を満たすためには、私たちコーチ側に承認の技術が必要ということを述べました。
承認の技術を紐解いていきますと、三つの種類があることが分かっています。それは、「存在の承認」「変化の承認」「成果の承認」です。それぞれに共通していえることは、「あなたのことをしっかりと見ていますよ」というメッセージを私たちが言動として見せることで、相手に安心感を与え、信頼関係を構築していくというものです。それでは、それら三つの技術を順に紐解いて参ります。
はじめに、最もベーシックなものが「存在の承認」です。これは、文字通り相手の存在を承認することです。身近な例を上げると挨拶です。「おはようございます」「おつかれさまでした」といった何気ない挨拶を交わすだけでも、「あなたのことを認めていますよ」というメッセージを伝えることができます。しかし、もしかしたら職場の同僚や部下に「おはようございます」と声をかけられても、PCの画面を見たまま返答をしていないでしょうか。これでは相手の存在を認めたことには全くなりません。相手の目を見て挨拶を交わすことでお互いを尊重し、存在を認め合うことができます。
その他にも、「ありがとうございました」「あなたのお陰で助かりました」などの感謝のメッセージを伝えることも、相手の存在を認めることとなります。リーダーの立場からすると、「仕事なのだから、お給料をもらっているのだから、やって当たり前」という考えの方もおられるかもしれませんが、メンバーが日々の仕事をきちんとやってくれているので全体の仕事が滞りなく回っていくということがあるはずです。そのような仕事に対して、「ありがとう」「とても助けられています」という声をかけていくことで信頼関係は深まっていきます。
次回は、相手の小さな成長や変化に気づき事実を認めて伝えていく「変化の承認」、相手の成長や成し遂げたことを認めて伝えていく「成果の承認」について深掘りをしていきます。