相手をリードしない質問

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

秋らしい爽やかな天気が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。

さて、人づくりとマーケティングの視点でのコーチングとして、前回は、相手のモチベーションを引き出していこうと質問を試みるものの、実際は質問ではなく提案になってしまっているという失敗事例を取り上げました。そこで、今回はその改善策として、私たちが会話をリードすることを意識してしまい「質問という名の提案」をするのではなく、会話をリードせずに相手の気づきを促していく質問について考えて参ります。

会話をリードしない質問。なかなか聞き慣れない言い方ですが、この質問は、たとえば「この会社で将来どのよう仕事に取り組んでいきたい?」「自分の長所について何か考えてみたことはある?」「自分の技術をどんな形で生かしたい?」などが考えられます。

前回の拙稿で失敗例として取り上げた質問は、「君はアイディアが豊富だから新規商品の開発にチャレンジしたらどうだい?」「ITスキルが豊富だからこの部署の技術サポートはどう?」というものでした。前回の質問が提案に近く、今回の質問がより「本当の意味での相手の気づきを促す質問」といえることがお分かりになるのではないでしょうか。

このような質問を繰り返していくと、相手は、次に何をしていくべきか次第に気づいていくことができます。悪い質問と良い質問との大きな違いは、質問が提案になっていないかどうかというものです。そして、その大きな違いは、会話のキャッチボールにおいて私たちが「ボールを持つ時間をできるだけ短くする」というものです。

ボールを持つ時間を短くするためには、「答えを考えない」ことになります。相手からの質問やコミュニケーションで「どうしたらよいですか?」と聞かれると、ついつい「自分が会話をリードしなければならない」と思い込んでしまい、提案型の質問になってしまいがちです。しかし、コーチングの基本は「答えは相手の心の中にある」ことですので、そのような場合は、ぐっとこらえて「君はどうしたら良いと思う?」と質問を投げ返すようにします。「○○をしてみたらどう?」では、質問ではなく提案になってしまうこととなってしまいます。

コーチングにおける質問は、「相手に気づきを与える」ことであって「相手を誘導する」ことではありません。このことを意識していくと、拡大質問や未来質問、肯定質問を上手く使いこなしていけるようになります。

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