プラグマティズム/物事には常に絶対的な解が一つあり続けるわけではないということ

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

先般、ドラッカー博士により昭和39年(1963)に発行された『経営の新次元』を古書店にて購入しました。経営史を振り返る「現代の経営50年」の章では、経営科学の課題として「高度な電子計算機を用いる前にそれを操る人について考えなければならない」という例を出した上で、「人間としての尊厳と人格の発展を客観的に理解すること」と「経済的・物的な現象を客観的に理解すること」という二つの異なる命題を一つに統合させ、昇華させていくことの重要性が記されていました。まさに「人づくりとマーケティング」の概念です。約60年前、ドラッガー博士によってこの課題意識が紹介されていたことに大きな感動を覚えました。

そして、その「人づくりとマーケティング」に欠かせない基本的姿勢がプラグマティズム(実践主義)です。前回は、はじめて提唱したパース博士の「理論や信念を対立させるのではなく、行為や結果に基づいて判断するべきである」​​という考え方を取り上げました。

その後、見解を発展させた継承者が、ウィリアム・ジェームズです。彼は、パースの言う「行為やその結果に基づいて判断」する際に、あわせて「実際に役立つのか、意味があるのかどうか」という観点を持って物事を判断すべきだと考えました。

ジェームズは、「理性や原則」と「経験や事実」は本来融合されるべきものであるが、相反し、二者択一に陥り、袋小路に陥っているという認識を示しました。そして、この現状を打開することができる心構えこそが、結果に基づいて判断するプラグマティズムであると論じました。

その後、プラグマティズムの適用範囲を広げ、世に知らしめた人物がジョン・デューイです。彼は、教育分野、芸術分野、心理的分野、そして民主主義など、社会の中でプラグマティズムの思想を活躍させていくフィールドを大いに広げました。探求や実践といった行動を重んじつつも、最も大切なことは「行動によること。そしてその行動を検証し、修正を加えながら判断し、未来に向かっていく姿勢」だと考えました。

プラグマティズムの歴史を振り返りながら私が得た考えは、物事には常に絶対的な解が一つあり続けるわけではないということです。行動の結果、そしてその結果の検証によって、常に基準は変化していくべきであるということです。

次回は、現代社会においてなぜプラグマティズムが求められているのかについて述べて参ります。

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