成長や成果「閾値から考える」

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

名古屋では桜が花開き、春を感じる季節となりました。

 前回は、量質転化が起こるためには、ある一定度まで、すなわち閾値を超える量の積み重ねが大切という話をしました。

 本日はこの閾値について、具体的に取り上げてみたいと思います。

 閾値とは状態が変化する限界値のことです。例えば水を温め続けると沸点の100度に達し、液体である水から気体である水蒸気へと状態が変化します。逆に冷やしていくと0度を境に、液体から固体である氷へと状態が変化します。各々その手前、99度であっても1度であってもどちらも水ですが、閾値である100度を超えると気体、0度を下回ると固体となります。 このように、状態の変化というものは徐々に起こるものではなく、閾値を超えた時に突然変化が起こります。

 つまり、閾値は反応が起こるために必要な水準ともいえます。

 私たちの仕事について考えていくときにも、閾値の発想を持つことができます。努力を積み重ね、ある地点を超えて以降、その努力に対する効果が急速に生み出されていくことを知っているならば、成果や成長が見られないときに「いま自分はその地点よりも手前にいるのだな」と認識をすることができます。現状としては、現状の成果や成長に伸び悩んでいたとしても、過度の失望をせず、引き続き地道に努力を続けることができます。

 一つの例として、占有率4割(正確には41.7%)という数値があります。これは、アメリカの数学者である、クープマンが市場やコミュニティにおける占有率が持つ意味合いに注目し、相対的な安定ポジションを得るための値として算出したものです。組織や市場などのコミュニケーションやマーケティングなど、あらゆるコミュニティにおいては、「影響が4割を超えると状態が急速に変化する」という目標となります。

 たとえば、出社したら自主的に掃除をしようという行動の場合、閾値として4割のメンバーがこの習慣を行うようになると、全体が協力していくようになります。また、組織の4割に情報が行き渡ると、全員にその情報が広がっていく傾向にもあります。こうしたコミュニティにおける行動変容や状態変化は、情報量や接触回数に正比例をしていくのではなく、閾値である4割を超えた途端に劇的な変化が訪れます。

 以上のように、飛躍を期して何かの取り組みを続けている際には閾値の発想が不可欠といえます。

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