松下幸之助とプラグマティズム
朝晩は冷え込む天気となってきました。日中との寒暖差で体調を崩す方も見受けられますので気をつけたいところです。
さて、前々回の松下幸之助の「青春」の詩、そして前回はその詩の中の重要な要素である「日に新た」への考察と続いてきました。「日に新た」の考察の中では、「万物は絶えず生成発展する」という、松下翁の人間観、自然観をお伝えいたしました。そして今回は、その生々発展について考えてみたいと思います。
松下翁は、昭和47年、晩年最大の名著と言われる『人間を考える』を発表します。永年の経営経験から、松下翁は経営を行う際にはまず経営理念を確立することが大事であり、その経営理念は正しい人生観、社会観、そして世界観に深く根ざしたものでなくてはならないと考えていました。
「宇宙に存在するすべてのものは、つねに生成し、たえず発展する。万物は日に新たであり、生成発展は自然の理法である」
「人間は、たえず生成発展する宇宙に君臨し、宇宙にひそむ偉大なる力を開発し、万物に与えられたるそれぞれの本質を見出しながら、これを生かし活用することによって、物心一如の真の繁栄を生み出すことができる」
「人間は、天命に基づいて善悪を判断し、是非を定め、いっさいのものの存在理由を明らかにする」
松下翁は「人間には、万物の王者としての偉大な天命がある」と考え、それをしっかりと自覚認識し活かしていくことが必要だと、さまざまな場で訴えていました。つまりは、人生の集大成であり、人生を通じて最も伝えたかったであろうこと。それこそがこの「新しい人間観」ともいえます。それは、人間の在り方に対する教条的・学問的な見解というようなものではなく、人間の幸せそのものに結びつく実質的な意義をもった人間観であるといえます。
この「実質的」という部分に、私は強く惹かれるものがあります。つまり、松下翁は理論や信念のみではなく、何よりも行動によって判断しようという思想、すなわちプラグマティズムであったともいえます。プラグマティズムを辞書で紐解くと「実用主義」「実際主義」「行為主義」等々さまざまな言い方ができます。
松下幸之助は、経営者としての生き方、一人の人間としての生き方を通して、自己と他者、物事を素直な心で俯瞰していました。多様な条件下でも適正かつ普遍的に人間は変容していくことができるということが、生成発展ということばに凝縮されているといえます。
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