当事者意識の源泉
前回、当事者意識の醸成について触れました。当事者意識を改めて考えてみると「組織の問題を自分の外の世界ではなく、自らの中の問題として捉え、他からの支配や制約などを受けず、自分自身で立てた規範に従って本気で知恵を出し、問題の発見と解決に向けて本気で行動をしようとする意識」ということができます。
当事者意識があれば、指図がなくとも各人が自分で考えて動くことができるため、経営の速度が上がります。本気になって考え行動していくので、成果物や成功確率も高まります。メンバーの当事者意識を高めることは、現場に近いところに権限を委譲していくエンパワーメント経営にもつながります。
当事者意識を高めるためには、責任を自覚させる方法に意外に近道はありません。「目的や意義をどうとらえ、何をどうするのか」ということを考え言語化し、自分の言葉で外に語ることができるように導くことが大切です。前回、「思考は現実化」するというナポレオン・ヒルのことばを引用したように、行動を鮮明にイメージできるようになると、私たちはそれを実践するための「ふさわしい自分でありたい」と望み、行動する意識が高まります。
そしてもう一つ、当事者意識を高めるリーダーとしての技術があると私は経験しています。それは、「逃げずに相手と対峙し、素直なフィードバックを行うこと」です。率直なフィードバックは、時に相手にとって厳しく突き刺さることがあります。「どうせわかっているだろう」と躊躇してしまいがちです。私自身も、「伝えても結果嫌われてしまうかもしれない」と怯んでしまいそうになることもあります。しかし、「今伝えないと相手が駄目になる」という愛情を持って素直な心で立ち向かうべきです。
最後に、私たちの会社においては、夏以降、コロナ禍の混乱から次第に落ち着きを取り戻し、少しずつですが業績数値も回復傾向に転じました。メンバーの皆さんには感謝しかありません。しかし数ヶ月を振り返ってみると、私自身、外出活動が憚られることを言い訳にして、内向きになってしまいがちでした。「自らが」という当事者意識の源泉が薄まっていることがなかったか、この文章を書きながら反省をしています。
年末の足音が聞こえてきました。本稿をお読みの皆さんとともに、率先して挑戦心と当事者意識を整え、そして仲間に伝播していくよう、情熱を持って経営に立ち向かっていこうと心新たにしています。