「着眼大局、着手小局」小さくとも実践を大切にする人間でありたい

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

前々回の拙稿において、「長崎県におります」という話題を書いたかと思います。その時のエピソードとその後の展開について、共有したいと思います。

 長崎県にあります製造業のT社長からは、補助金や人材に関するご相談をいただいておりました。2月3日に訪問した際には、工場長のSさんとともに、「5年後である2028年に新工場へ移転する」ということをテーマとして、マインドマップやロジカルシンキングを行いました。人材課題のみならず、技術開発、営業、資金繰りなど多様な課題や方向性のアイディアを出し合いました。
 そして、本質となる課題のことを私たちは真因と呼んでいるのですが、この目標における真因は、「副工場長の育成」という結論となりました。

 後日、副工場長としての資質の向上策について、再度、マインドマップとロジカルシンキングを繰り返しました。途中では、「相互理解の不足」「リーダーにやってもらいたいことが明確ではない」「出社したら何気なく仕事をスタートしてしまう」等々の意見がでたのですが、結果としては、忙し現場の中で何か新たな施策を行うのではなく「今あるものを活かそう」ということで落ち着きました。

 ちょうど、この会社にはT社長がつくられた「15の約束」という行動指針があります。今まではT社長が朝礼を仕切り、行動指針の伝達も一方向で社長が社員さんに伝えるのみになっていました。そこで、これからはリーダーをふくむ正社員の皆さんが輪番で朝礼の進行係を担い、行動指針に関する所感を発表し、T社長からフィードバックを受けるという双方向型へ進化していくことになりました。

 中国戦国時代末期の思想家のひとりである荀子の有名な言葉に「着眼大局、着手小局」があります。T社長には、大きな流れとしては5年後に工場移転という目標があり、その中期課題として「副工場長の育成」が存在することになりました。そのための目下の取り組みが「朝礼の進行係を輪番にする」ということは、一見、稚拙なようにもみえます。しかしながら、「着眼大局、着手小局」という言葉が示すように、物事全体の中から要点や本質を見抜き、細やかなところに目を配り具体的な何かをスタートさせるということは、目標の大きさに呆然と立ちすくみ指を咥えたままじっとしていることよりも、尊い実践があります。
 この故事が示すように、私自身も小さくとも実践を大切にする人間でありたいと改めて思いました。

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