基本の大切さ「型破りか型なしか」

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

「型を会得した人間がするのを型破りと言う。そうでなければ、ただの形無しだ」
 2012年に亡くなられた歌舞伎役者の中村勘三郎氏が遺されたことばです。

 「型破りか型破なしかのどちらになりたいか」と問われれば、もちろん「型なし」と答える人はいないはずです。
 では、型破りから連想される印象はどのようなものでしょうか。大胆な判断ができる、既存の枠にとどまらない、埋没しない等々、個性的で自分なりの活躍をしているイメージがあるのではないでしょうか。

 ところが現実は大きく違い、むしろ真逆です。勘三郎氏は、練習に練習を重ね、徹底的に型を習得。特に十八番である「春興鏡獅子」の演技には生涯をかけて練習を重ね続け、後継者や弟子にも幼い頃から基本を徹底的に叩き込んだそうです。そして、その土台をもとに型破りな演技に精力的に取り組んだからこそ、世間から認めていただけたのでした。

 型とはもちろん基本を意味しています。基本を徹底的に獲得して、はじめてその基本を破っていく能力が身についていきます。これらはもしかすると本当に地味な作業の繰り返しかもしれないですし、得てして「個性を発揮したい」「このほうが効率的だと本に書いてあった」「早く自分で考えたことを実践したい」と思ってしまう気持ちもわかります。しかしながら、初期の段階、型をマスターしていない段階でその気持ちを実行に移してしまうならば、単なる「型なし」で薄っぺらい人間になってしまいます。

 このことを私たちは「型破りは格好良いが、型なしはダサい」という表現で戒めています。 
 一方、世の中の風潮は間違った方向に進んでいるように危惧しています。基本となる型なくして成長はないのですが、地道な習得を避けて通ることが効率的と評価されつつあります。

 当社の話題になるのですが、先般ご案内しましたロジカルシンキングやマインドマップ、また新規顧客の開拓を中心としたマーケティング手法、既存顧客のフォローアップ、そして内勤の事務に至るまで、あらゆる場面において培ってきた基本的なフレームワークがあります。もちろん、皆様の会社にも同じような知見があるものと拝察します。まさにこれらが土台であり、この基本を習得してこそ、新たな工夫やチャレンジを加えていくことができます。
 「これは型破りなのか型なしなのか」
 まずは自身に問いかけるとともに、まわりのメンバーの言動を確認してみてはいかがでしょうか。

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