仮説と検証「実行者になくてはならないもの」

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

「仮説は、建築する前に設けられ、建物が出来上がると取り払われる足場である。足場は作業する人になくてはならない。ただ、作業する人は足場を建物だと思ってはならない」
 ドイツの著名な詩人・小説家、ゲーテのことばです。

 前回はロジカルシンキングやクリティカルシンキングをとりあげつつ、仮説の大切さについて述べました。今回はそれを深掘りしながら、課題解決と仮説との関係性について考えてみたいと思います。

 仮説を立てて課題の解決を試みていく手法は、一見馴染みがない方もいるかもしれませんが、よく用いられていると思います。「恐らくこれが答えではないか」と推測しながら物事を進めていく方法は、日常生活にも当てはまることが多いかと思います。仮説を端的にいえば、仮の答えを想定して、それが本当に正しいものかどうかを確かめることです。もちろん、仮の答えなので、正しいこともあれば、外れることもあります。しかし、はじめから正確な答えをさがしていくよりは、ビジネスの現場では確実に早い方法です。

 また、仮説には検証がセットです。仮説があっているのかどうか、確かめなければ意味がありません。つまり、ある課題に対して仮説を構築し、実際に現場で検証する。その検証結果にもとづいて、仮説を再構築し、また検証する。これらを繰り返していくことで、課題の本質に迫っていくことができるのです。

 ここで大切なことは、課題を正しく設定するということです。課題の設定が不明確だと、当然ですが仮説も不明確なものとなることに注意が必要であり、ここで大切になってくる手法が、前回紹介した、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングといった論理的に原因を探求していく方法です。

 以上をふまえると、仮説と検証については、次の三つの段階で行われることがわかります。
 一つ目は「どのような課題が起きているのか」を正確に把握する課題の特定、二つ目は表層的な事象から根本を探る原因の深掘り、三つ目は課題に対する解決を仮説と考え実行していく「打ち手」の実施です。

 最後に、冒頭のゲーテのことばに立ち返ります。建設する前、すなわち物事が実行される前に課題を把握し仮説を立案する必要がある、仮説は実行者にとってなくてはならない、しかしながら仮説は成果物とイコールであるということは思ってはならないということになります。本稿が皆様にとって仮説と検証の大切さを見直す機会となりましたら幸いです。

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