クリティカルシンキング「仮説を検証する」

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

前回は、ソクラテスの問答法について、権力志向が強い社員に対して気づきを促すような対話の例を取り上げました。
ただ単に「相手を論破したい」「相手の間違った信条を打ち負かしてやりたい」ということではなく、相手のために矛盾を浮き彫りにしながら、より良い仮説を見つけ、共有を図っていくていくという観点が大切です。

 ところで、社内での会議やお客様との対話などにおいて、主張が錯綜してしまい、このままでは結論が育まれないという経験はないでしょうか。このようなときにこの問答法は役に立ちます。今回は、このような現場での実用性について考えていきます。

 問答法は、ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの二つの組み合わせから成り立っています。ロジカルシンキングは論理的思考であり認知度が高いのですが、クリティカルシンキングは馴染みが薄いのではないでしょうか。クリティカルシンキングのクリティカルとは「批判」を意味するラテン語の「クリティカ」が由来となっており、批判的という意味です。したがって、クリティカルシンキングとは、批判的思考と訳されます。クリティカルシンキングは、MBAの課程などでトレーニングが組まれたりしており、徐々に認知度が上がってきています。

 ビジネスの現場でしばしば「PDCAを回す」ということがいわれます。この際に必要な能力の一つがロジカルシンキング、すなわち論理的思考です。しかし、それだけではうまくいかない場合もあります。この際に必要となってくるのが、クリティカルシンキングです。私たちの会社ではPDCAのPのことをプランではなく、「仮説」と位置付けています。仮説を実施し、検証していくという作業が事業の創造、事業の発展には不可欠という考え方です。そして、この仮説というものを考えるときに必要なのが、クリティカルシンキングです。

 私たちが生み出す仮説は、どうしても思考途中に偏りが出てきてしまうものです。以前も書きましたが、人間は経験や環境にとらわれてしまう生き物です。しかしながら、個人のみならずチームとしてクリティカルシンキングの考え方を用いることで、客観的、俯瞰的に仮説の良し悪しを判断し、改善を図ることができます。それがクリティカルシンキングであり、問答法が大切であるといえる所以です。

 ひとりよがりにならず、客観的に仮説を検証し進めていく。そんな展開に重要な考え方が問答法といえます。

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