相手の話を聴く「良い聞き手はになることは難しいという認識を持つ」

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

前回は、良い聞き手になるための実例として、「考えていることをすべて出し切ってもらうこと」や「相手のネガティブな心理状況を受け取らないこと」について述べました。今回は、私たち聞き手の意識変革について考えてみたいと思います。

 実際に、良い聞き手とはどのようなものなのか、私なりに三つにまとめてみました。

 一つ目は、相手と自分の感情は別であるということの認識です。このことは相手のネガティブを自分が引き込まないということにも繋がります。相手がどのように感じているかということと、自分がそれをどのように感じるかということは、全く別の問題であり切り離す必要があります。もし、ネガティブな相手の話を聞いて、マイナスの反応を得て「自分はこう感じる」と伝えてしまった場合、それは自らの主張にすぎないので注意が必要です。この主張を相手がマイナスに捉えてしまった場合は、その先のことが話しにくくなってしまいます。相手の感情を尊重しつつも自分の感情は切り離し、相手が話している事実を受け取る必要があります。

 二つ目は相手を変えようとせず、可能性を信じるということです。相手を変えようとすると、アドバイスや意見を言いたくなります。時としてそのようなことも必要になるかもしれませんが、多くの場合、アドバイスは自分からの決めつけになってしまっています。アドバイスが目的になると、相手が本来話したいことではなく、相手を変えるための根拠を抜き出すための対話になってしまう可能性があります。あくまでも話の主役は相手にあり、どう変わりたいかを引き出すことに着眼点を置く必要があります。加えて、相手が難しいと感じていることであっても、可能性を信じて限界を外すことができれば、相手が本当に思っていることや期待していることを引き出すことも可能です。

 最後は、大前提として「聴くことは難しい」という覚悟を持って聴くことです。私たちの経験が多ければ多いほど、聞き手に回ることは難しく簡単ではありません。自分の知見にもとづいた発言を意識して「ぐっとこらえた心理状態」で挑むからこそ、高い集中力を発揮した聞き役に徹することができるともいえます。少しでも気が緩み、自分の心に余裕ができてきたりすると、自分の意見や主張を交えたくなるので注意が必要です。

 良い聞き手になることは難しいという前提にたち、緊張感と誠意をもつことが、何よりも大切といえます。

conversation between people with questions and answers

関連記事一覧