新型コロナウィルスの感染者数が再び拡大し、第4波といえる状況になりつつあります。せっかくのゴールデンウィークではありますが、今年も大人しく過ごすこととなりそうです。

さて、会議や対話におけるファシリテーションについて、今回は論点から外れた発言に対する対処法を考えてみたいと思います。

拡散の段階で、煮詰まったときに枠組みを変えるリフレーミングや、事前に時間切れになったときのためのグランドルールなどを駆使して議論が盛り上がったとしても、それが、元々話し合うべき論点と異なるところで盛り上がってしまったのでしたら意味がありません。場づくりの段階で目的を整理し明示したとしても、「ちょっと本題から外れるのですが」といった発言はよくあることです。そんな時は、素早く本筋へ戻す技術が会議の舵取り役であるファシリテーターに求められます。

しかし、その本筋から外れた発言が立場が高い人や発言力のある人であったりすると、少々やっかいです。いくら自己中心的な発言であっても無視する訳にはいかず、うまく軌道修正できないこともあります。

そんなときに役に立つのが、ホワイトボード上に「待機場所」をつくるという手法です。この場所に、脱線した発言を参考意見として書くことにするのです。そして、最後に議論をまとめる段階において、その発言事項の必要性を考えていきます。

ファシリテーターの具体的な進め方としては、「貴重なご意見ですが、本日の議題とは少し異なりますので、ここに書き留めて記録します」というコメントをしながら、待機場所を活用します。ここでのポイントは、たとえ論点から脱線した発言であったとしても、一旦は受け止めるというものです。「それは本日の議題とは関係ありません」と一刀両断してしまうこともできますが、それを行うとせっかく盛り上げた場も凍りついてしまい、発言者の気分も概してしまいます。また、他の発言者からも「変なことは言いづらいな」と思われてしまい、自由に意見が言える雰囲気でもなくなってしまいます。

待機場所に書くことによって、発言者は自分の意見を受け止めてもらえたと感じますので、自己肯定感を高めたまま参加し続けてくれます。ファシリテーターには、「どんな発言であっても論点という軸はぶらさない。しかしながら外れた意見であったとしても全員の気持ちを受け止めていく」という、気概と優しさが求められているといえます。

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