エフェクチュエーション/逆算思考からの脱却

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

先日、新しい事業を考えるにあたって大切なことは、目標を立ててその道筋を真っ直ぐいくというよりは、紆余曲折はありながらも不思議な出会いやきっかけを生かしながら着実に進んでいくことではないかということを話していました。

このことに関連するキーワードとして、昨今注目されているのが、「エフェクチュエーション」です。これは、優れた起業家に共通する思考や行動のパターンのことであり、インド人の経営学者サラス・サラスバシー博士が、著書『エフェクチュエーション:市場創造の実効理論』のなかで提唱しました。今まで一般化できないと考えられてきた起業家の思考を体系化し、学習可能なものにしたことで注目が高まっています。

不確実性が高まる現代において、従来の方法では物事は上手く進まないことが多くあります。企業で一般的に用いられている目標設定型のアプローチは「コーゼーション」と呼ばれます。目的を最初に設定し、必要な資源をその実現のために揃える​​手法です。たとえば、「年間売り上げ1億円」といった目標を定め、それを達成するために最適な方法を順に決めていくことです。

しかし、変化が多いこの時代に数ヶ月先、数年先まで見通すことは困難です。サラス・サラスバシー博士によれば、現代で活躍する起業家に共通しているのは、目標を先頭に立てて厳守をするのではなく、手段に価値をおいた思考プロセスでした。求める結果から逆算するコーゼーションではなく、今、手元にある手段からスタートして、それらから何ができるかを考えることであり、この手法をエフェクチュエーションと呼んでいます。

コーゼーションでは、はじめに「自分は何をすべきか」を考えるのに対して、エフェクチュエーションでは、「自分は何ができるか」という質問からスタートします。
そして、手持ちの手段を見つけるために、
「自分は誰であるのか(特質・能力・属性)」
「何を知っているのか(知見・専門性・経験)」
「誰を知っているのか(社会的ネットワーク)」
という三つの資源を洗い出します。

コーゼーションとエフェクチュエーション、この二つはどちらが優れているか、ということではありません。すでに経験があり1を10にするような場合にはコーゼーション、ゼロイチといわれるようなことに取り組むような場合にはエフェクチュエーションが有効です。

次回はエフェクチュエーションを構成する原則について考えていきます。

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