技術力も人間性も成長していかなくてはいけないという決意の発露
二十四節気でいうところの雨水の時期を過ぎました。
空から降るものが雪から雨に変わり、氷が溶けて水になるという意味だそうです。草木が芽生える頃で、昔から農耕の準備を始める目安とされてきました。寒い日もありますが、着実に春に向かっていることを実感します。
さて、前回の拙稿にて、長崎県の製造業の会社での事例を取り上げました。社長・工場長に次ぐ役割である副工場長を育てていくためには、技術力のみならずそのマインドも育んでいかなくてはならないという考えのもと、日々、社長が行動指針を取り上げていた朝礼を正社員さんが輪番で進行していくこととし、各々が行動指針への所感を述べることとなりました。加えて、正社員に対して、「将来の副工場長を育てるためにも、リーダーとしての役割を明確に伝える」という考えのもと「パートさんとのコミュニケーション」と「仕事の段取り」の二つのスキルを高めてほしいと伝えたそうです。つまりは、次のリーダーがなすべきことは、パートさんとのコミュニケーション、仕事の段取り、ということを定義されたということになります。
また、朝礼の双方向化については、工場長から「自分が双方向型の朝礼を仕切ります」というお申し出があったそうです。「社長ではなく自分が副工場長を育てなくてはいけない」という意識のもとでの発信だったそうです。
松下幸之助の有名な言葉に「松下電器は何をつくるところかと尋ねられたら、松下電器は人をつくるところです。併せて電気器具もつくっております。こうお答えしなさい」があります。創業間もないころから、ことあるごとに従業員にそう話していたそうです。晩年、その理由として「松下電器は電気器具をつくるけれども、それ以上に大事なものをつくっているんだ、それは人そのものを成長さすんだという心意気に生きておった」と述べています。
人材の育成というものは、単に技術力や営業力のある社員を育成すればよいということではありません。仕事の意義や社会に貢献するという会社の使命をよく理解し、自主性と責任感を持った人材を育成するということにあります。
工場長の抱いた「自分が副工場長を育てなくてはいけない」ということは、副工場長の育成という機会を通じて、工場長自身がより一層、技術力も人間性も成長していかなくてはいけないという決意の発露だといえます。引き続き、この工場長の心意気を応援していきたいと思います。