全体最適
先日の拙稿では、「広い当事者意識を持つと全体最適に近づいていく」ということに触れました。今回はその全体最適について、より深く考えていきたいと思います。
自分に余裕がなくなったり、視野が狭まったりすると、どうしても自分視点でしか物事を見ることができなくなります。しかし、日々、仕事を続けていく上では、より全体的な視点で物事を考える必要がでてきます。「一般社員は課長の、課長は部長の、部長は役員の、役員は社長の視点で考える」とよくいわれるように、ワンランク・ツーランク上の支店で物事を考え、俯瞰するように、全方位的、多面的に確かめてみる、全体最適の視点を持つことで、日々の業務がより上手くいくようになります。
例えば、「このプロジェクトは必ずお客様に喜ばれるだろう」と自信満々で起案した企画が、上司にあっさりと否決されたとします。私もサラリーマン時代、このようなほろ苦い経験が多々ありました。当の本人は、「顧客に支持されているのになぜだ?」と疑問と憤りを抱くかもしれませんが、これはあくまで、自分の半径2メートルでしか見えない、部分最適でしかなかったのかもしれません。
同じプロジェクトを、経営者の視点、会社全体の視点から、より広く俯瞰してみるとどうでしょうか。本当は「工数の割に効率が悪い」「コストに見合う結果が得られない」「一緒に手を動かす賛同者がいない」など、何らかの問題点が浮かび上がってくることはよくあることです。
実際に経営者の友人から聞いた話ですが、その企業では、働き方改革に関するプロジェクトで一般社員側から経営者に対してプレゼンテーションをしてもらったそうです。しかし、役員や社長の評価は散々。理由は発表内容が、会社に対する要望、「何かをしてください」に終始しており、自分たちの側からの自発的な行動変革に対するコミットメントが何もなかったそうです。確かに、組織と個人、リーダーと一般社員など、取り組み内容の役割分担は必要ですが、自分たちの行動を棚に上げて相手に要求するばかりではうまくいきません。
私たちは目の前だけ、つまりは自分の足下の世界をみるだけで、何かを判断したり、一喜一憂をしたりしがちです。しかし、そういった部分最適の仕事だけをしていれば、必ず行き詰ります。常により広い視野で世界を眺めることができれば、自分視点だけの仕事の限界を突破でき、全体最適に境地に辿り着けると確信しています。