戦略に活かすためのファクトは何か

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

暦の上では立春を過ぎました。変化の激しい時代、今年一年の取るべき方向性について、思案を巡らせている方も多いのではないかと思います。

そこで、今回は経営戦略とファクト、すなわち事実との関係性について考えてみたいと思います。

失敗することを考えて戦略を立てる経営者はいません。しかし、残念ながら戦略の成否は戦略を立てる前から決まっていることが多いということも事実です。孫氏の兵法の有名な言葉に「彼を知り己を知れば百戦危うからず」とあります。この言葉のとおり戦いにおいて敵と味方のことを熟知していれば、負ける心配がないはずです。しかし、実際は多くの戦略が失敗します。私たちの会社でもそのようなことがあります。それでは、なぜ失敗してしまうのでしょうか。自らの経験も振り返りながら、述べてまいります。

なぜ戦略が失敗してしまうのか。孫氏でいうところの「彼」にあたある外部要因も重要ですが、実は己自身、すなわち経営者が見ている自社の現場の事実が「本当の事実では無い」ことに大きな原因があります。

戦略には、「来店者が前年比何パーセント増」といったことが論理的に筋が通る「一見きれいにみえるもの」や、その時々の流行りのロジックをただ取り入れるだけといった、生々しさのないものが多くあります。そして、残念ながらそういった戦略は失敗していきます。

例えば、ある雑貨の小売店では、コロナ禍における販売戦略として、自分たちの商品の実店舗以外のwebやスマートフォンなどを活用したECコマースを立ち上げ。市場分析から売上を急増させ、実店舗のマイナスを補う、という戦略を立てました。しかし、真のファクトは「その会社の女性自身が自社の商品を買わない」というものでした。ターゲットに該当する女性社員が多く、社員割引があるにもかかわらずです。

経営者にこの状況の共有ができておらず、現場のファクトが見えていないため、「どう売るか」に専念してしまい、そもそものお客様のニーズである、「何を売るか」を真剣にお考えるという視点がすっぽりと抜けてしまっていたのです。

どんな販売手法をとっても、現場の人たちが欲しいと思えず、誇りの持てない商品を売ろうとしてるので、経営者が取るべき打ち手、論じるべき課題を間違えていることは明らかです。

ファクトと戦略のためには現場の直視が必須です。次回も事例をご紹介しながら、その解決策について考えて参ります。

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