稲盛和夫『人生と経営』を読んで(加藤優)
読み終わり、何人の同世代経営者仲間にこの書籍を勧めただろうか。
読む前は、京セラの創業者で、盛和塾という私塾を開塾したことは知っていたが、それ以上に語ることはできなかった。一度読み終わり「なんと面白い内容なんだ」と、再度、方眼紙にまとめながら読んでみた。まだ飽き足りず、両親に稲盛和夫について語るために実家に帰った。
稲盛さんのファインセラミックではないが、実家は窯焼きでセラミック、碍子を製造している。物づくりの厳しい世界を知っているからこその苦労、会社経営の責任を担っている今の私には全てが必要な言葉であり、自分のものにしたいと情熱的な気持ちになった。
第一章は現場時代、京都セラミックス創業期の、がむしゃらで、熱く、苦悩多き日常を送られた話だった。ご縁で入社した松風工業では「たった一度しかない貴重な人生を、決して無駄に過ごしてはならない」「常に前向きに生きよう」など自分の方針を持っており、同僚には働く意義の重要性を語り、集団のベクトルを揃えられていた。創業期では「技術屋の夢では、従業員の理解は得られず、経営は成り立たない」そのため、「経営者は自分のためではなく、社員のため、さらには世のためにという考え方をベースとした経営理念を持たなくてはならない」ことを悟られた。幼少期より自分の人生、普段から社会について癖のように考えていたからこそではないかと思う。いくら情熱があっても実践せず終わってしまう人もいるが、最後まで貫き通すことの強い意志は稲盛さんの才能だろうと感じた。
第二章からは、おいたちから振り返りながら、稲盛さんの思想・哲学ができるまでを学んだ。小学生ですでに「リーダーになろうとする人間には勇気が必要であること、自己犠牲を払わなければならないこと、自分の尺度で勝手に判断してはいけない」と経験から学んだという。また、同郷の西郷隆盛や大久保利通を学ぶことにより、将来に対するビジョンや理念だけではなく、合理的な取り組みが伴わなければいけない、局面に正常に使い分ける人格が素晴らしいと考えられた。幼い頃に両親からの愛情や正義、郷中教育を受けることによっての基礎をつけたことは大きな武器であり、素直であったからこそ身についたものだと思う。
第三章からは経営に哲学がなぜ重要であるのか、また稲盛さんが学んだ人物、宇宙の法則について語られていた。「経営や人生の道程には、さまざまな岐路があり、そのつど判断をして進んでいかなければならないが、そのときどきに正しい判断ができているか否かで、経営や人生の結果が左右されてしまう」とある。これは正しいのか、もう一方のが正しかったのではないかと未熟な私は何度も判断を出すことに悩まされることがある。だからこそ今、学ぶ必要がある。人間として正しい考え方を学ぶのだ。才能の使い方についても私物化してはいけないという考え方に共感し、いただいた才能に感謝し多くの方に使っていきたいと思った。
第四章からは現世での貢献と来世のための浄化活動について、日本の将来に対しての危惧が書かれていた。素晴らしい経営者は、どうにか社会に貢献、恩返しができないかと考えている方が多い。当たり前にできることではない。第三章に記載があったが功績に見合う報酬をもらってもいいのではないかと思ってしまうのが人間の欲である。育ててもらった京都に恩返し、これからの若い技術者を応援するため、日本が健全に発展していくためにと稲盛さんしかできない力強い応援の方法を知る事ができた。想像以上の貢献をされておりただただ驚いた。稲盛さんが西郷隆盛の魅力に引き込まれていったように、私も稲盛さんの魅力に引き込まれている。
このタイミングに稲盛和夫さんを学ぶことができたのは必然であったと生意気ながら思う。経営哲学、人間として正しい判断をすること、ブレない軸を作ること、「日本でいちばん幸せを感じられる会社をつくる」経営に邁進していきたい。