過度な承認欲求「誰からいちばん認められたいのか」

加藤滋樹のつぶやき(人づくり×マーケティング)

朝晩と日中の寒暖差を感じる日々です。この原稿は小倉駅で書いているのですが、駅前には大きなクリスマスツリーが飾られつつも、昼間は半袖がよいくらいの汗ばむ陽気です。

 さて、前回までは「良い話し手とは良い聞き手である」ということをテーマとした心遣いや具体的な技術について考えてきました。このことに関連して、先日お会いしたお取引先の介護施設の経営者から、社員や入居者の自己肯定感の欠如にともなう過度な承認欲求の課題についてお悩みの吐露があり、大いに考えさせられました。

 改めてここで考えてみたいのですが、私たちは、一体誰から「いちばん認められたい」と思うのでしょうか。組織人の場合は上司や経営者かもしれません。お取引先や家族、友人、子どもなども候補にあがりそうです。しかしながら、いちばん認められたいという相手は、これらの方々ではなく、自分自身ではないでしょうか。

 この自分自身に認められたいという意識が、どのようにコミュニケーションに影響してくるのか。このことからこの話題をスタートしていきます。

 冒頭にできた承認欲求とは、自分を価値がある存在として認められたいという欲求のことをいいます。具体的には、話を聞いてほしい、共感してほしい、褒めてほしい、評価してほしい、考えを肯定してほしい、苦しみを理解してほしい、気にかけてほしいなどたくさん思い浮かびます。

 アメリカの著名な心理学者である故アブラハム・ハロルド・マズローは、人間の基本的な欲求を五階層に分類する、自己実現理論(通称・欲求段階説)について言及しました。下位から順番に生理的欲求(食事、排泄、睡眠など、生命を維持するための欲求)、安全欲求(誰にも脅かされることなく、安全に生活をしたいという欲求)、所属欲求(集団に属したい、仲間から愛情を得たいという欲求)、承認欲求(他者から独立した個人として認められ、尊敬されたいという欲求)、そして自己実現欲求(自分の可能性を最大限に引き出し、創造的活動をしたい、目標を達成したい、成長したいという欲求)となっています。

 理論のポイントは、低次の欲求が満たされてはじめて次の階層の欲求を求めるということです。現代の日本では、命の危険に晒される可能性はほとんどありません。したがって多くの人達は、現実には承認欲求からスタートすることとなります。次回はこの承認欲求を満たしていくための関わりについて考えていきます。

 

 

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